あっと思い出す。
本多くんは確かスマホを2台持っていて、あたしに番号を教えてくれるとき、“これはメインだからいつでも掛けて”‥…というようなことを言っていた。
「うん。知ってる、けど」
「……はあ、まじで」
ため息みたいな声だった。
「俺だって持ってない。あの慶一郎さんにすら、意地でも教えてない番号だよ、それ」
「え……」
まさかの事実に驚きを隠せない。
あのけいいちろうさん……というのが誰だか分からないけど、中島くんでさえ知らない番号だったなんて。
「あのさ……、どこまで知ってる?」
探るような目つきで見つめられるから、たじろいで言葉に詰まった。
「……まあ今はいいや。とりあえずその番号に掛けてみてほしいんだけど、いい?」
「あたしが…?」
「俺からの電話に出ないのは、恐らく端末を取りあげられてるからか壊されてるからか……。けどもう一つの方は、上手く隠し持ってるかも知れない」



