ついには、あたしに背を向けて、誰かに電話をかけ始めてしまった。


「あー……中島です。すみません慶一郎さん。本多のことなんですが──」


話し相手と思われる──けいいちろう、さん。
以前、聞いたことがある名前。


本多くんたちには本多くんたちの世界があって、たぶんそれはあたしの住んでる世界と次元が違うものなんだろう。

ぼんやり思った。

入り込む隙なんてない……。


唇を噛んで、足を1歩引いた。

その矢先。



「───え? 相沢萌葉?」


通話中の中島くんの口から、突然あたしの名前が零れた。