暗黒王子と危ない夜


また少し、この人を怖いと思った。


「足場悪いから気をつけてね」


それと裏腹なやさしい声に、心臓が少しずつ狂わされていく。



「手、貸して」

暗闇の中に、差し出された手がぼんやりと浮かびあがった。

素直に手を取るべきか迷っていると、しびれを切らしたように掴まれる。


よく触れてくる人。
だけど、不思議と全然いやじゃない。

本多くんはたぶん顔色ひとつ変えてないし、下心だってきっとない。


女性に慣れているのか、はたまたそういうことに無関心なのか。


……たぶん前者だろうなと、ぼんやり思った。