「あれは元々、非常口でもなんでもない。立禁だとかでっかく書いてあるけど、ほんとは昼間でも鍵開いてるし」
……乱暴な言葉を吐いてるわけじゃない。
口調は相変わらず穏やかで、あたしの知ってる本多七瀬くんに違いはないけど。
「この通路、校舎の入り組んだ場所にあるから外部の連中から見つかりにくいんだ。相沢さんが立入禁止って信じてたみたいに、うちの生徒でさえ、ここの存在を知らない人が多い」
さっき触れた体温と同じくらいの冷たさを、どこかに感じる。普段の本多くんじゃない、ような。
……ううん、違う。
たぶん、あたしが知らないだけ。
これが本当の本多くんなんだと思う。
昼間に学校で見る、明るくて温かい本多くんは、きっと本人が “そう見せて” いるもの。



