「表からは出ないほうがいい。外履きだけ持って、またおれについて来て」


状況が把握できていないせいで緊張感ばかりが増していく。

言われた通りに上履きを脱いで、靴箱の中からローファーを取りだした。


あたしが戻ってくると、彼は何も言わずに、元来た廊下を進み始めた。


その足が止まったのは西階段の手前だった。



「ここを抜けたら、体育館の駐車場に出る。裏門の場所はわかるよね。そこから出れば安全だと思うから」


本多くんが手をかけたのは、普段あたしたち生徒は通り抜けが禁止されている非常用の扉。


「本多くん、待って」


錆びたドアノブを回す手を、慌てて制する。


「ここは通っちゃだめ。生徒は立入禁止って決まりだから……」