「アリシア、来ていたんだね」
目の前の人混みが少し散らばり、端にいた私に気が付いたのであろう、ディアスが私の元へとやって来た。
お気に入りであるという金糸で刺繍されたジュストコールが、動きに合わせてキラキラと輝く。
ディアスに気付いたスカーレットは、少し笑って私を見る。
その表情に少し照れながら、笑みを返す私。
スカーレットはディアスに対して一礼をした。
ディアスもそれに一礼で返す。
「ご機嫌麗しゅう、レイス伯爵様」
「ああ、君はブラウニー伯爵の。……そうか、ふたりはとても仲が良かったね」
「ええそうなの。今日はスカーレットに誘われて久しぶりに参加したのよ。最近結婚式の準備で忙しくてスカーレットとも会えなかったから、参加すればたくさんお話が出来ると思って」
そうディアスに参加した理由を告げると、心なしかホッとしたような笑みを浮かべた。
「……良かったじゃない、アリシア。王子様のお出ましね」
「もう、スカーレットったら」
「王子様がいらっしゃったら私はお邪魔虫よね。少しその辺をふらふらとしてくるわ。……ごゆっくりね」

