捕まえてごらんなさいっ!~意地っ張り令嬢と俺様侯爵の溺愛攻防戦~

……父には言えない。

どうして私がこんな風になってしまったのかなんて、言えるわけない。

言ったところで、口づけごときでと呆れられてしまうだろう。

私自身が認めなくても、父はランスを婚約者として受け入れようとしているのだから。



彼は刺激が強すぎる。

私にはついていけない。

きっとこの先も同じように、振り回されて苦しむはずだ。


……嫌。

こんなに心を乱されるのは嫌。


誓ったはずだった。

もうひとりでいいと。

心穏やかに、ひとりで過ごすはずだった。



――なのに、どうして。


身体を縮こまらせて、胸元の布を握る。


苦しいはず。

こんな想いは、辛いだけなはずなの。

……なのに。

どうして、ランスの顔ばかり思い出すのよ……。