捕まえてごらんなさいっ!~意地っ張り令嬢と俺様侯爵の溺愛攻防戦~

「……アリシア様!どうなさられたのですか!?」


どのくらい時間が経ったのだろう。

アイリーンが不安げな声で、私に声を掛けたところで意識が戻った。

「なにか言われたのですか!?それとも泣くまでに酷い行いをされたのですか!?」

未だ涙は出続けたまま、涙で滲むアイリーンを見る。

「な……、なんでも、ないの」

「そんなに泣きはらして、なにもない訳がないでしょう!?」

「待って、待ってアイリーン。少し私に落ち着く時間を……」

今起きたことをアイリーンに言ったところで、どうにもなるわけではない。

それよりも、この状態で言えるわけがなかった。


私の言葉でアイリーンはハッとした表情をして口を噤み、代わりに私の背中を撫で始めた。

優しくゆっくりと何回も、落ち着くようにと撫でてくれる。


「申し訳ありません。ついアリシア様のその姿に気持ちが乱れてしまって」

「……いいの。逆に気を遣わせてごめんなさい」

「まずはお部屋に戻って着替えましょう。それからゆっくりとお休み下さいませ」


抱えられるようにして、ゆっくりと席を立つと部屋へ戻った。

ドレスを着替え、そのまま寝台へ横たわる。


アイリーンは気を遣ってなのか、しつこく聞いてくることはなかった。

ただ私を労わるように、背中をさすり、私が落ち着くのを待っていた。


その間、何回か父が心配してなのか部屋へと訪れたようだったが、アイリーンが落ち着くまでは、と断ってくれたらしい。