扉の向こうからランスを見送る侍女たちの声が聞こえる。
しかし、今の私には目に映る光景も、その声も全て霞がかかっているようだった。
私、ランスと口づけを……。
しかもあんな口づけ……。
カタカタと小刻みに震える手を、唇へやる。
そこに既にランスの唇はないはずなのに、まだその感触が残っていた。
あんな口づけは初めてだった。
ディアスと一緒にいたときですら、あんな濃厚なものしたことない。
それどころか、唇を触れ合うのですら互いに恥ずかしくてそう何回も経験がないのに。
口づけなんて、もっと互いを知って仲を深めてから行うものだと思っていた。
……それなのに。
「どうしよう……」
テーブルに零れた紅茶はとっくに冷たくなり、ドレスの裾は薄茶色の染みが分かるほどになっている。
それでも私は口元を押さえたまま、動くことができないでいた。
ぼろぼろと涙が溢れ流れる。
何故泣いているのか、私にも分からない。
止めようと思っても、止められずただただ流れ続けている。
そのときの私自身の感情もまた、分からなかった。
怒りなのか、悲しみなのか。
それすらも理解できないほどに、頭の中は混乱していた。
しかし、今の私には目に映る光景も、その声も全て霞がかかっているようだった。
私、ランスと口づけを……。
しかもあんな口づけ……。
カタカタと小刻みに震える手を、唇へやる。
そこに既にランスの唇はないはずなのに、まだその感触が残っていた。
あんな口づけは初めてだった。
ディアスと一緒にいたときですら、あんな濃厚なものしたことない。
それどころか、唇を触れ合うのですら互いに恥ずかしくてそう何回も経験がないのに。
口づけなんて、もっと互いを知って仲を深めてから行うものだと思っていた。
……それなのに。
「どうしよう……」
テーブルに零れた紅茶はとっくに冷たくなり、ドレスの裾は薄茶色の染みが分かるほどになっている。
それでも私は口元を押さえたまま、動くことができないでいた。
ぼろぼろと涙が溢れ流れる。
何故泣いているのか、私にも分からない。
止めようと思っても、止められずただただ流れ続けている。
そのときの私自身の感情もまた、分からなかった。
怒りなのか、悲しみなのか。
それすらも理解できないほどに、頭の中は混乱していた。

