「…んんっ」
なかなか離れてはくれない、ランスの唇。
それどころか、私の抵抗を押しのけ中へと侵入してくる勢いだ。
両頬を包むランスの手を掴み、なんとか離れようと試みるが、普段鍛えている男の力に敵うはずがない。
それどころかその濃厚な口づけで、逆に私の力が抜けていく。
唇が離れたときには、私の身体の力は完全に抜けきって、そのままソファーに倒れ込むように座ってしまった。
頭の中が真っ白で、なにも考えられない。
先程の勢いが嘘のように、全てが抜け落ちている。
そんな呆然とする私を見て、ランスはニヤリと笑った。
「婚約者がいた割には慣れていないんだな。……まあ、その方が私も嬉しい。これからたくさん口づけをしてやろう。いずれこれもなしではいられなくなる」
「な……」
「その状態では無理だろうから、見送りはいい。では愛しいアリシアよ、また五日後に」
そう言って、ランスは部屋を出ていった。

