――その瞬間。
「!!」
目の前が遮られる。
「……っ!」
それは私の口にお菓子を入れられたように、ほんの一瞬での出来事。
気が付いたときには言葉を発しようにも、出すことができなくなっていた。
吐息のようなものが、微かに漏れるだけだ。
――どうしてそうなったのか。
なぜなら、ランスの唇が私の唇を塞いでいたから。
テーブル越しに私の両頬をランスの大きな手で包み、引き寄せられるようにして口づけをされている。
その際、私の身体がテーブルに当たって、ガシャンと音を立ててカップが横倒しになった。
紅茶がテーブルに広がり、私の着ているドレスの裾にじわりと染み込む。
本来ならばその時点で慌てるはずだ。
けれど、今それ以上に衝撃的な出来事が私に降りかかっている。

