屋敷内へと入ると、父がバタバタと走ってアーチャー様を出迎えた。

その場で軽く話をした後、応接室へと案内される。


部屋に着くまでの間、父は私の顔をチラチラと覗きながら、目で訴えていた。

多分、『その表情をなんとかしろ!』と言いたいのだろう。


でも私は敢えて視線を逸らし、それには応えなかった。


こうなれば意地よ。

どう対処すればこの結婚が無くなるのか、未だ答えが見つからない今、私がやれることは態度で示すことだけ。

とにかく、私は靡かない、嫌だ!って気持ちを前面に出すしか方法はないんだから。


応接室へと入ると、アーチャー様は腰にぶら下げていた長剣を傍らに置き、ソファーへと腰掛けた。

直ぐに扉が叩かれ、アイリーンが紅茶とお菓子をテーブルに置く。


やっぱり紅茶は一級品のもの。

そしてお菓子も、この国で一番有名で高価なものだった。


この人に対してここまでしなくてもいいのに、と思うが、父からすればこのくらいやって当たり前の人なのよね。


アーチャー様に嫌われれば、必然的に国王にも嫌われる可能性が大きいわけだし。


それくらい重要な地位にいる方なんだもの。