父は立ち上がると私の頭をポン、と叩く。

私は唇を噛みしめ、視線を横にずらした。


――卑怯よ。

そこで母の名前を出されてしまったら、これ以上言えなくなるじゃない。


母が喜ぶほどの幸せ?

私があの人と結婚することで、そんな幸せが得られるというの?


そんなわけない。
そんなの、信じられない。


父は、私を部屋に残して出ていく。

私は少しの間、その場から動けなかった。



これで私の周りに、味方はいなくなってしまった。

今後はひとり、アーチャー様との結婚を阻止しなきゃならない。


……どうする?

どうしたらいいの?



考えてもその場で答えが出ることはなく。

結局答えが見つからないまま、無情にも時は過ぎていった。