「失礼しま……あ、アリシア様!いかがなさいました!?」
一向に部屋から出てこない私に心配したのだろう、アイリーンが部屋へと入って来る。
そして床にへたり込んでいる私を見て、心配して傍へ寄って声を掛けてくれた。
その声にハッと我に返り、顔だけをアイリーンへと向けた。
「だ、大丈夫よ。ちょっと力が抜けただけ」
「まさかなにかされたんじゃ……!お怪我はございませんかっ!?」
「なにもないわ、本当よ。怪我もしてない。ただ、少し驚いてしまっただけなの」
アイリーンはなお不安げに私を見ながら、介抱してくれる。
その助けによってようやく立ち上がることができた。
「お部屋へ戻りましょう、アリシア様。少しお休みになられた方がよろしいと思いますわ」
「そうね、自室に戻るわ。部屋まで手伝って貰えるかしら」
「もちろんです。このような状態ではひとりで戻れませんもの」
未だに力が入らない下半身を無理矢理引きずるようにして、ゆっくりと自室へと戻る。
廊下はいつもの静けさを取り戻していた。
アーチャー様が屋敷からいなくなったのだと、その静けさで分かる。
それだけでも少し安心してしまう私。
横でアイリーンが支えてくれたお陰で、なんとか部屋へと戻ることができた。
部屋の中へ着くなり、倒れ込むようにソファーへと腰掛ける。
その後アイリーンが、気分が落ち着く効果のあるハーブティーを用意してくれ、それを少しずつ飲んでようやく落ち着きを取り戻した。

