アリシア=ネリベル。
この国――バークレイ王国の中で、四代続くネリベル伯爵家の嫡女であり、今年で十九歳になる。
半年後にレイス伯爵家の嫡男であるディアスとの結婚を控え、夜会が行われるたびに招待状は貰っていたが、最近はあまり参加することはなかった。
しかし今回は親友であるブラウニー伯爵家の令嬢、スカーレットに誘われ、久しぶりに宮中での夜会に参加した私。
相変わらずの強烈な香水の匂いに、思わず扇子で鼻元を隠す。
人工的に抽出されたこの香りだけは、どうしても好きになれない。
かといって手で鼻を覆うのは、マナーに反する。
扇子で顔を隠した所で匂いを遮断出来るわけではないけれど、せめてもの抵抗。
なんとか目元だけは笑っているように無理矢理瞳を細め、大広間の端、扉の近くでやり過ごしていた。
……やっぱり来るんじゃなかった。
スカーレットと話ができると思って、参加した私が馬鹿だったわ。
肝心のスカーレットは、お目当ての男性がいたらしく、その男性と親しげに話し込んでいる。
婚約者のいる私は、ディアスに気を遣って他の男性と話すのをなるべく避けていた。
これだけの沢山の人で、まだ会ってはいないけれど、ディアスもこの夜会に参加しているだろう。
他の男性と親しく話をしているところを見られて、変に誤解されても困るし。
ディアスは少し嫉妬深い所があるから。
本当は帰りたい。
でも、スカーレットに声をかけないまま黙って帰るわけにもいかない。
「はあ……」
つい、ため息が零れる。
そんな私に気付いた給仕がワインを差し出してくれ、それを少しずつ飲みながらその場を凌いでいた。
この国――バークレイ王国の中で、四代続くネリベル伯爵家の嫡女であり、今年で十九歳になる。
半年後にレイス伯爵家の嫡男であるディアスとの結婚を控え、夜会が行われるたびに招待状は貰っていたが、最近はあまり参加することはなかった。
しかし今回は親友であるブラウニー伯爵家の令嬢、スカーレットに誘われ、久しぶりに宮中での夜会に参加した私。
相変わらずの強烈な香水の匂いに、思わず扇子で鼻元を隠す。
人工的に抽出されたこの香りだけは、どうしても好きになれない。
かといって手で鼻を覆うのは、マナーに反する。
扇子で顔を隠した所で匂いを遮断出来るわけではないけれど、せめてもの抵抗。
なんとか目元だけは笑っているように無理矢理瞳を細め、大広間の端、扉の近くでやり過ごしていた。
……やっぱり来るんじゃなかった。
スカーレットと話ができると思って、参加した私が馬鹿だったわ。
肝心のスカーレットは、お目当ての男性がいたらしく、その男性と親しげに話し込んでいる。
婚約者のいる私は、ディアスに気を遣って他の男性と話すのをなるべく避けていた。
これだけの沢山の人で、まだ会ってはいないけれど、ディアスもこの夜会に参加しているだろう。
他の男性と親しく話をしているところを見られて、変に誤解されても困るし。
ディアスは少し嫉妬深い所があるから。
本当は帰りたい。
でも、スカーレットに声をかけないまま黙って帰るわけにもいかない。
「はあ……」
つい、ため息が零れる。
そんな私に気付いた給仕がワインを差し出してくれ、それを少しずつ飲みながらその場を凌いでいた。