「……へ?」


思いもよらぬ言葉に、私は変な声を出した後、目を大きく見開き固まった。


け、け、っこん?

誰が?

誰と?



どうやら隣に座る父もアーチャー様の言葉に驚愕したらしく、ガタンと大きな音を立てて、ソファーから半分落ちた状態で固まっている。


私達がそのような状態になるのも当たり前だ。


だってそんなこと、天と地がひっくり返ってもあり得ない話なのだから。


そんな私たちを前にしても、アーチャー様の表情は一切変わらない。


「もう一度言おう。アリシア、どうか私の妻になって欲しい」


むしろなにも答えられない私達に、畳みかけるように話した。


二度目のアーチャー様の言葉で、父はハッと我に返ったのか落ちかけたソファーに慌てて座り直し、そして声が裏返りながらも、言葉を返す。


「こ、侯爵様。恐れ入りますが、求婚する相手をお間違えでは?話では侯爵様は王女様との縁談の話が進められていると……」

「その話は噂にしか過ぎない。言っておくがふざけて話しているわけではない、私は正式にネリベル家に対し縁談の申し込みをしに来たのだ」