鮮やかな朱色のマントに、二列ボタンの黒い軍服。

これはこの国の騎士団所属の人間しか着用を許されない、特別なもの。


胸元には、これまでの功績を称え国王から与えられた章飾。

片肩から前部にかけては、騎士団団長である事を表す飾緒が吊るされている。


遠くで見ただけでも美しいと思えたのに、この近距離でアーチャー様を見ると、その美しさと堂々とした佇まいは、逆に怯んでしまいそうなほどだ。



思わず見とれてしまって、入口で立ち尽くしたまま動けなくなってしまう。

そんな私を、父が慌てて部屋の中へ入るようにと促した。


「いいから早く座りなさい。侯爵様を待たせては失礼だぞ」


父は私を隣に座らせる。

向かいにはアーチャー様。


私が腰掛けると、チラリと私の顔を見て、視線が交わった。

透き通ったライトブラウンの瞳に、ドキリと胸がなり、思わず視線をずらした。