捕まえてごらんなさいっ!~意地っ張り令嬢と俺様侯爵の溺愛攻防戦~


――そしてあの日、あの夜会で。

大広間の壁際に佇むアリシアを見つけた。

あの頃よりも随分と大人になって、美しさはより磨かれ、そして幸せなオーラを放っていた。

あれから面と向かって会い、話したことはなかったが、すぐにアリシアだと気付いたよ。

君は私でなくとも、幸せになれる。
本当は私がこの手で幸せにしてやりたかった。

でも、それは叶うことのない、幻だ。

少しの間、じっと彼女を見つめる。

彼女も私を見つめていた。


――交わる視線。

その短い時間が、私にとってなににも代えがたい、幸福な時間となった。


ああ、これでいい。もう十分だ。

アリシア、どうか君の未来が明るいものであるように。

この言葉も思いも君には伝わらないだろうが、私はずっと君を思い祈っている。

どうか笑顔絶やさぬよう。

どうか……。


そうして私の長年の願いは、無残にも引きちぎられ終わりを告げたと思っていた。

祈るだけでいい、それだけでいいと言い聞かせ、この先どうなるかも分からない道を、ただ歩むだけなのだと思っていた。

――しかし、翌日。

まさかの衝撃的な事実を知ることとなる。