振り向いた彼女は、幼くも少しずつ大人の顔を持ち合わせていた。

ドクリとまた胸が鳴る。

どこかしら憂いを含んだ笑顔。

なにか辛いことを経験しながら成長しているのだと感じる。


ふたりでいた時間は、それほど長くはない。

けれどその時間は私にとって、忘れられないものとなった。

彼女の名前から、どの家の令嬢であるかは分かった。


ネリベル伯爵家の嫡女。

身分的にはさほど問題ではない。

年齢の差は多少あるにせよ、それも特に問題があるほどのものではない。



彼女と別れてから日を追うごとに、彼女への思いはどんどんと膨らんでいった。

訓練をしていても、任務をこなしていても、戦場へと赴いても、私の頭の中には必ず彼女が存在していた。


彼女のために死ぬわけにはいかない。

なんとしてでも、私の妻にしなければ。


いつしかそう思うようになり、私はひとつの決心をする。

私が騎士団長となったとき、彼女に求婚しようと。

彼女が結婚できる年になるまでに、必ず騎士の頂に立とうと。