――初め、そこに天使が舞い降りているのだと思った。

透き通るような、清らかな歌声。

その歌は一度聴いただけで頭から離れず、以来忘れたことなど一度もない。



騎士団への入団式のため、父と共に城へと訪れていた私。

すべての儀式を終え、少し休もうと庭を散策していたときだった。

どこからともな歌声が聞こえる。

陰りのない、美しい音色。

私は導かれるように、その歌声のもとへと歩みを進めていく。


その主は、ひとりの少女であった。

まだ十にも満たないであろう、幼い少女。

普通であれば小さい子を前に、こんな思いを抱くこともないはずなのに、なぜかその後ろ姿だけでも心奪われてしまう。

どんな子なのだろう。

胸の高鳴りを感じつつ、徐々に近付いた。