「ど、どうしたの?」

「アリシアがとても美しくて、つい見とれていた」


そう言うとランスは私の身体を引き寄せた。

彼の息遣いと体温が嫌というほど伝わり、私の心臓は激しさを増す。


「周りの女性がどれだけ着飾っていたとしても、アリシアの美しさには敵わない。私にはひと際輝いて見えるんだ。そのたびに君の姿を私以外の他の男には映したくないという嫉妬に駆られる。可笑しいだろ?それくらい私はアリシアに嵌っている。気持ちが通じた今、その思いはより強くなっているんだ」


手に持っていたワイングラスを、手すりの平坦な部分に置くと、私の手を口元へ寄せて口づけを落とす。

葡萄酒の熱とはまた違う、こそばゆいような熱がその手の甲からじわりと広がった。



「好きだ、愛している。何回言っても足りないくらい、私の頭の中はアリシアでいっぱいだ。もう絶対に離さない、アリシアは私のものだ」


ランスは耳もとで囁く。

私は精一杯の笑みを浮かべ、答える。


「……ええ、ランス。私も愛しているわ。あなたは私のもの、もう傍から離れないで」


「もちろんだ。我が愛しの女神よ」




――ふたりの影が重なる。

その影は長い時間、離れることはなかった。