捕まえてごらんなさいっ!~意地っ張り令嬢と俺様侯爵の溺愛攻防戦~

そう言うとランスはまた怪しい笑みを浮かべる。

私は顔を赤らめたまま、反論することができなくなった。

「ほ、本当に意地悪な人!」

「くくっ、まったく可愛いやつだ。素直になれ、アリシア」


ランスは顔をくしゃりと崩して笑う。

無邪気な笑顔に、また私の心臓は高鳴った。


そんなやり取りをしていると部屋の扉が再び叩かれ、医者がカストルと共に部屋へと入ってくる。

その瞬間、ランスはいつもの凛々しい表情に戻り、何事もなかったように対応をし始める。

切り替えの早さに思わず驚いてしまった。


「夜遅いところ申し訳ない、シーモア。早速だがよろしく頼む」

「はいはい、かしこまりましたよランスロット様」


その医者はシーモアという名前らしい。

かなり年配の女性で、長い白髪を後ろでひとつに結い、真っ黒なローブのようなものを着ている。

見た目、医者というよりは、魔女といった方がいいくらいだ。