ハッと目を見開き、我に返る。
それはランスもまた同じだった。
ランスは一瞬、驚いたかのような顔を浮かべたが、すぐ不機嫌そうな表情になった。
「……カストルだな。ったく、空気を読め」
舌打ちをしながら、そう恨めしそうに呟く。
その声はとても小さく、扉越しの人間には聞こえてはないだろうが、扉を叩いた主カストルは、まるですべてをお見通しのように、こうランスに声を掛けた。
「お取込み中のところ、大変申し訳ございません。お医者様がご到着されました。……旦那様、分かっているとは思いますが、アリシア様はお怪我をされているのでしょう?あまり無理をさせてはなりませんよ」
「負担になるようなことはしていない、誤解するなカストル。医者をこの部屋まで連れて来てくれ」
「それはどうだか……。承知致しました」
負担になるようなことは、って、私には思いっきり負担になっていましたけど!?
と突っ込みたくなったが、今までの後遺症というべきか、頭が上手く回らず言葉を発することができない。
ランスは私の上から離れると、頭をがしがしと掻きながら寝台から立ち上がった。
私も身体を起こそうと体勢を変えた瞬間、ランスに止められる。
「アリシアは寝ていろ、無理をするな」
「いえ、大丈夫です。手首と腕以外は特に痛む部分もありませんし」
「でも、今ので身体に力が入らないだろう?」

