馬を走らせて少し経ったところで、ランスの屋敷に着く。
屋敷へ向かう道はとても暗く、闇に吸い込まれていきそうな感覚に恐怖を覚えたが、後ろに座るランスの体温を感じて、その恐怖に耐えることができた。
大分遅い時間だというのに、屋敷の窓からは明かりが漏れている。
きっと主が無事に帰るのを待っていたのだろう。
屋敷の玄関前では、ひとりの男が立っていて、私たちを出迎えてくれる。
「お帰りなさいませ、旦那様。……そしてお待ちしておりましたよ、アリシア様」
「カストル、今帰った。アリシアは怪我をしている、直ちに医者を」
「かしこまりました」
彼はランスの執事であるという。
カストルは私を見て微笑み、軽く一礼をすると、足早に屋敷の中へと戻っていった。
深夜遅くに私が屋敷を訪れたというのに、カストルは一切動じることはなかった。
まるで私が来るのを、あらかじめ知っていたようだった。
「私が突然この屋敷に来たのに、なにも驚かないのね」
「ああ。いずれこの屋敷に連れてくると前々から伝えているからな。それがたまたま今日であっただけ。でもまさか怪我をしてこの屋敷に来るとは、カストルも思っていなかっただろうが」

