捕まえてごらんなさいっ!~意地っ張り令嬢と俺様侯爵の溺愛攻防戦~

――突然、鈍い音が聞こえた。


地面に響くような、低い音。

普段生活している中では聞いたことのない、異質なものだった。



「がはっ……」


ディアスが吐くような声を出すと共に、私の顎にかけられていた手が力なく放される。

今まで感じていた圧がスッと消え、そして私の傍らでなにかが崩れ落ちるような音が響いた。


はあはあ、と荒い息遣い。

苦悶に耐える声も聞こえる。


しかしそれは、別々の人間から発せられているものだと気付く。


私は固く瞑っていた目を恐る恐る開けた。

不明瞭な視界が、徐々にハッキリとしていく。



床に置かれた明かりで映し出される、黒い軍服姿の男。

恐怖で雁字搦めになっていた私の心が、一気に解放される。




そこには、鬼の形相でディアスを見下ろす、ランスの姿があった。