捕まえてごらんなさいっ!~意地っ張り令嬢と俺様侯爵の溺愛攻防戦~

冗談なのかと思った。

そんなの信じられるわけがない、と。


でもディアスの瞳が、それは嘘ではないと物語っている。


怒りと恨みと、醜い感情が入り混じった瞳。

それは惜しげもなく私に向けられていた。


最初から私は騙されていた。

私の知る"ディアス"は、初めからこの世には存在などしていなかった。


怒りを通り越して、悲しさがどっと押し寄せてくる。


それは騙されていたという思いももちろんだが、なによりもディアスが哀れに思えて仕方なかったから。


彼に真っ当な言葉を投げかけ諭そうとしたって、改めるなんてことは不可能だ。

絡まった糸のように、ぐちゃぐちゃに拗らせてしまった考えは、もう誰も解くことなんてできない。

……なんて可哀想な人間なの。

あなたにはもっといい人生が待っていたはずなのに。