捕まえてごらんなさいっ!~意地っ張り令嬢と俺様侯爵の溺愛攻防戦~


――あれから一年、私は一歩も屋敷の外から出なかった。

今は離れて暮らしている兄のバレッタや、スカーレットが心配して手紙をくれたり会いには来てくれたけれど、それ以外はほとんどの人間との接触を断ち、ひっそりと暮らす毎日を送っていた。


屋敷の中の侍従や侍女でさえ、ほとんど声も掛けない。


ひたすら一日中窓の外を眺めていたり、酷いときにはベッドから起き上がらずに過ごしたこともある。


本を読んでも裁縫をしても、なにも面白くない。


人と話すのも億劫なだけだった。



ただただ、ぼおっと過ごすだけ。


なにも考えず、ひたすら時が過ぎるのを待つだけの日々。



でも、それが自分にとってはやけに居心地がよく感じてしまって。

それは多分、悲しいことも辛い出来事も経験せずに済むからなのだと思う。