そのときだった。

ガチャリと扉の開く音が聞こえる。


咄嗟に私は音の聞こえた方へと顔を向けた。


そこにはひとりの人間が立っていた。


暗くて良く見えない。

明かりを持っているようだが、その灯は腰元の部分にあって、顔は闇に包まれている。

その人間は開かれた扉の前で立ったまま、こう言葉を発した。




「……ああ、もう目覚めたんだね」




その声には聞き覚えがあった。


――そう。

一年前までは私の近くでよく聞いていた声。


あのときは、これからずっと隣で聞いていくのだろうと思っていたもの。


けれど、懐かしいなんて感覚は生まれなかった。

生まれたのは、恐怖という感情だけ。

私は思わず身を強張せる。


そして、震える声でその名を呼んだ。



「……ディアス!」