そして、時折訪れるくらっ、とした感覚。
どうやらまだ三半規管が正常ではないようだ。
……あっという間だった。
勢いよく馬車の扉が開いて、屈強な男の姿を見たと思ったら腕を掴まれて……。
馬車が激しく振られたときにできた腕の痛み以外に、特に痛む場所はない。
たぶん薬でも嗅がされたのだろう。
でなければあんなすぐに意識が無くなるなんてことはないはずだから。
にしても、ここは一体どこなのだろう。
一通り見渡してみたのと、外から聞こえる声の感じからして、なんとなくだが山小屋のようなところだと思う。
夜の森は、格段に危険だ。
仮にこの手の縄が解けて逃げ出せたとしても、生きて帰れるかの保証はない。
しかし、私が今置かれている状況も、危険であることは変わりない。
逃げなければ。
でも、どうやって?どこに?
上手く働かない頭を、必死に回転させて考えていた。