「……ん」

異質な臭いがやけに鼻に付き、意識を取り戻す。

かび臭いような、なんともいえない香りだ。


初めぼやけて見えていたものも、徐々に焦点が定まってハッキリと分かってくる。

それは、いつも目が覚めたときに目に映るものではない。

少し朽ち果てた木が重なる天井。

ああ、これがかび臭さを感じる原因か、とぼんやり思う。

瞬間、我に返った。


「ここはどこ!?」

勢いよく身体を起こそうとしたが、手に違和感を感じ起こすことができない。

どうやら後ろ手に固く縛られて、その場から動かせなかった。

「……っ!」

それでもバタバタと身体を捻ったり、左右に振ったり、出来る限りの力と動きで解こうと試みるが、所詮女の力ではどうすることもできなかった。

なんとか上半身だけを起こし、辺りを見回す。

そこはやけに薄暗い。

視線の先にある明かりが、ひとつだけ灯されているだけだった。

右を向けば小さな窓らしきものがあるが、そこから見えるのは漆黒の闇。


微かではあるが、ほう、ほう、と梟の鳴き声も聞こえる。


どうやらもう夜を迎えているらしい。