「それではアリシアの意にそぐわない相手と無理矢理結婚させなければいけなくなる。……本当にいいのか?死んだアリアも悲しむぞ?」
その名前を聞いて、少し身体が反応する。
しかし、冷静に答えた。
「お母様には悪いと思っているわ。でも、こればかりはどうしようもないもの。お父様がそうしたいのなら、そうすればいい。私はもう、結婚に夢なんて見られないから」
これ以上この話は続けられたくなくて、私は席を立つ。
後ろで父が私の名を呼ぶが、それに反応せずに食堂を出た。
"アリア"とは、死んだ母の名前。
母は長い事病気を患っていて、五年前に亡くなってしまった。
小さい頃から、『どうかあなたも愛し、愛される人を見つけて幸せになるのよ』と言い続けていた母。
闘病中でも、ずっと私の幸せを願い気にかけてくれていた。
確かに今の私を見たら、母は泣いてしまうわね。
だって、ずっと不幸せなままなのだもの。

