捕まえてごらんなさいっ!~意地っ張り令嬢と俺様侯爵の溺愛攻防戦~

『ごめんなさい、ランスロット様!私、もう行かなきゃ』

『あ、ああ。すまない。じゃあ、元気で……』


私はランスに頭を下げると、そのまま踵を返し、城の入り口まで戻ろうとする。


『――待って!』


しかし後ろから声を掛けられ、駆けだした足がピタリと止まった。

振り向き、私の目に映ったランスにドキリと胸が鳴る。

とても真剣な表情。

彼の髪が、風に乗ってゆらゆらと揺らめいていた。



『また、会おう。――必ず』

『……?はい!』


そのときのランスの表情に、私は少しだけ不思議に思いながらも、笑顔で返した。


そこに表れていたランスの顔は、真剣だったけれどどことなく切なげで。


私はこのとき、ランスロットという名前と、騎士団に所属していることしか聞いていなくて、本当にまた会えるのかどうかなんて、分からなかったけれど。


彼のその表情を見てしまっては、どうしてもその言葉に対して、『分からない』なんて言えなかった。