扉が閉められ、しんと部屋の中が静まり返った。



ベルフォンヌ様は、ふたりきりになったのを確認すると、おもむろに席を立ち、私のいる場所へとやって来る。

そして私の目の前まで来ると、じっと私を見つめた。


空よりも深く鮮やかなブルーの瞳が私を射抜く。

その眼力の強さに、私の身体は石のように固くなって指先すら動くことができなくなってしまった。


――王女としての威圧と威厳。

それを嫌というほど、間近で感じている。

逃げたいという気持ちが大きく膨らんでいく。

しかしその思いに反して、私の身体は魔術にかかったように動かせない。


やがてベルフォンヌ様の深紅の唇が動いた。



「さて、ふたりきりになったところで、単刀直入に言うわ。――アリシア、私はあなたとランスロットとの結婚を認めない。ここで潔く身を引いてもらうわよ」


――冷たい言葉が部屋の中に響く。


私の心臓がドクリと大きな音を立て、足元がガラガラと崩れていくような感覚がした。