結局一睡も出来ないまま、朝を迎えた。
目の下には薄く隈も出来ているし、体調もあまり良くはない。
だからといって会わないという選択は、私にはない。
パンとスープを少しだけ、無理矢理お腹の中へと流し込むと、城へ行くための準備を始める。
「お気持ちは分かりますが、あまり無理なさらないで下さいね。お帰りになりましたら、早めにお部屋でお休みしましょう」
「ええ、そうするわ。心配してくれてありがとう、アイリーン」
ベルフォンヌ様に接見するのに、派手なものはあまりよろしくないと、ベージュの落ち着いたドレスに、髪型も控えめに纏め上げる。
寝不足の酷い顔をアイリーンが必死に化粧で隠してくれて、なんとか見られる顔になった。
すべての準備が終わった頃に、馬車が屋敷の前へと着く。
その馬車は城から派遣されたもので、屋敷にある馬車よりもひと回りほど大きく、全体に細かな装飾が施され、気品が漂っている。
馬車から降りてきたランスは、まるで王子様のようだった。
漆黒の軍服を纏った、勇敢で美麗な男。
その姿に私の心臓が跳ねる。
「では行こうか、アリシア」
「――はい」

