――その日の夜。
翌日はベルフォンヌ様と会うために早く起きなければならないというのに、私はランスとの一件がどうしても気になって、寝られず寝台の中で悶々としていた。
必死に過去の記憶を辿ろうとする。
真っ暗な闇の先に眩いばかりの光が見えているのに、その光はなかなか近付いて大きくはならない。
そこに答えがあるはずなのに。
思い出さなきゃならない記憶がその先にあるのに。
ランスは私がちゃんと思い出すまで、ずっと黙ったままだろう。
それはたぶん、自分の力で思い出して欲しい"何か"があったのだろうから。
私の母の歌を知っているのも、私が歌えることを知っているのも、そして私を"好き"だというランスのきっかけも、私が昔の記憶を取り戻せば、すべて解けるのだろうから。
……思い出さなきゃ。
ほんの少しでもいい、きっかけさえあればその光に届くはずなの。
その記憶を取り戻したとき、ランスへの見方が変わるかもしれない。
私のこの思いもまた、変わるかもしれない。
それが良い方向なのか悪い方向なのか、それはまだ分からないけれど、でももう、このままではいられないって、分かったから。
だからお願い、どうか思い出させて――……!

