「……なぜそんなことを聞く?」
「だって、近くにいてお話もたくさんしているのだろうし、他の人よりもベルフォンヌ様のことを知っている。それにあれだけの美しい人、好きにならないわけがないわ。……本当はベルフォンヌ様のことが好きなんじゃないの?」
そう言い終えた瞬間から、ランスの表情がみるみる不機嫌なものに変わっていった。
「そういった感情をベルフォンヌ様に持ったことは一切ない。持つのは忠誠と尊敬、だたそれだけだ」
「でもランスは王女であるベルフォンヌ様を"彼女"と呼ぶじゃない。それはお互い気心が知れているからなのでしょう?」
「それはベルフォンヌ様が幼い頃からの付き合いではあるからな。そんなもの、どこの世界でも一緒だろう」
「それならなおさらじゃないの。それだけ知っているのなら、結婚するのになにも問題はないじゃない。別にいいのよ?無理に私なんかと結婚するよりも、ベルフォンヌ様と結婚する方が、幸せで実りのある結婚生活になるんだし。……なんの取り柄のない私なんかとするよりも」
あくまで冷静に、説き伏せるようにランスに伝えた。
私がどうあがいたところで、ベルフォンヌ様には敵わない。
私と結婚しても、きっと後悔するだろう。
それにそれだけの長い付き合いならば、結婚してもきっと上手くいくはずだろうし。
――そう。
私なんかに執着しなくても。
ランスは大きなため息をつく。そしてとても低い声で私の名を呼んだ。
「……アリシア」
「なに?」
「お前は大馬鹿者だ」

