捕まえてごらんなさいっ!~意地っ張り令嬢と俺様侯爵の溺愛攻防戦~

「私、捕まったりしないわよね?だって、噂でも現にベルフォンヌ様を傷付けるような行為をしてしまったわけだし。その罪でこの家まで伯爵の位を剥奪されることになってしまったら……」

「まさか!そんなことあるわけない!……と思う、けれど。そんな大それたこと」

尻切れトンボな受け答えが、余計に不安を煽る。

悪く言われるならまだしも、ベルフォンヌ様を敵に回したらここでは生きてはいけない……!

「……なんとしても断らなきゃ。これ以上一緒にはいられない」

「で、でも噂だし。ランス様ともう少しお話してからでも」

「そんな噂が出ていること自体が問題なのよ!私のせいでベルフォンヌ様が傷付いているのよ?謝っても謝りきれないわ!」


どういう経緯なのかは知らないけれど、ランスもベルフォンヌ様と結婚した方がいいに決まっているのよ。


どうしてもっと早くに気付かなかったのだろう。

ランスの言葉と行動に翻弄されて、なにも考えられなかった私は大馬鹿者だ。


部屋の扉が叩かれる。

兄が屋敷へ到着したと、アイリーンがスカーレットを呼びに来たのだった。


スカーレットは呼ばれた瞬間に目を輝かせ、そして浮足立ちで部屋を出ていく。



私はというと、兄を笑顔で出迎えるほど、心に余裕はない。


ただひたすらに、どうやってランスとの繋がりを終わらせるか、それだけを頭の中で巡らせ、結局部屋から出ることはなかった。