……その十日後、衝撃的な事実を知る。

「――え?今なんて言ったの、スカーレット」

「だからね、かなりあなたとランス様が噂になっているというのは前にも言ったじゃない?実はその噂に第一王女であるベルフォンヌ様が傷心されているとの話なのよ」

スカーレットの話を聞き、手に持っていたカップを落としそうになってしまった。



――自室にて。

ランスの別荘で泊まった翌朝は、前日の嵐が嘘のようにとても気持ちよく晴れ、そのまま私たちはメデュールに乗り屋敷へと戻った。

父はとても心配していただろうと思ったが、ランスが傍にいるからとそんな不安は微塵も思わなかったそうだ。
むしろニヤニヤと怪しい笑みを浮かべて、私たちを出迎えてくれた。

それからランスは休みがないとのことで、あの日以来この屋敷には訪れてはいない。

私もまたなにをするわけでもなく、ただ部屋の中で過ごすいつもの生活を送っている。


相変わらずほとんど外に出ない私に会いに、スカーレットが屋敷を訪れていた。




……というのは建前で、本来の目的はどうやら私ではなく、兄のバレッタに会いに来たらしい。



話によると、兄は今日から夏休みに入るらしく、家に戻ってくるそうだ。

私はこれまでランスのことで精いっぱいで、兄が帰ってくることを知らなかった。

言われて、ああそうか、と気付いたくらい。


兄の到着は昼過ぎなのだそう。


けれどスカーレットは逸る(はや)気持ちを抑えられず、来てしまったとのことだった。