捕まえてごらんなさいっ!~意地っ張り令嬢と俺様侯爵の溺愛攻防戦~

「どうした?私に見惚れているのか?」

そんな私に気付いたランスが、手を休めることなく顔だけこちらに向け、言葉を発した。

そう言われてハッと我に返る。


「そ、そんなこと……。――そうね、悔しいけれど今回は見惚れてしまったわ」


その言葉は嘘ではない。

指摘された恥ずかしさで、「違う」と反論したかったが、それを誤魔化すことができないくらい、私の中では衝撃的な光景だった。

料理をするのは男性ならば料理人だけだし、ましてや貴族の人間がするなんて思ってもみなかったから。

自分の既成概念が覆された。

貴族だからって思ってはいけないってことも。


だから、素直にそう返した。


ランスは勢いよく顔を私から背ける。

そして黙々と作業を続けた。


「どうしたの?」

「……なんでも」


あまり見ないランスの行動に怪訝な表情を作ったが、ふとあることに気付く。

……あれ?


よく見ると、髪から少し覗く耳が少し赤くなっていた。

今まで余裕な雰囲気を醸し出していたのに、心なしか焦っているようにも見える。


……もしかして、ランスは照れている?


それは意外な反応だった。

たった一言、それもさほど大した内容のものでもないのに。

彼を少しだけ認めた発言に、こんなになってしまうなんて。


胸がトクン、と鳴る。

ランスの意外な一面を垣間見て、私の心がまたざわつき始めた。