捕まえてごらんなさいっ!~意地っ張り令嬢と俺様侯爵の溺愛攻防戦~

手紙すら持ち続けていられないほどに、身体中から力が抜けてしまう。



よほどのことがない限り、貴族同士の結婚に対して国王様自らが命を出すことはあり得ない。


ましてや伯爵位同士の結婚、さほど重要なものではない。

その結婚に国王様が関わることなど、ないと言ってもいいほどだ。


けれど、そのあり得ないことが今、私に降りかかっている。



「国王様が自ら命を出すほど、この結婚をなしとする理由は何なのでしょう……?」

「……それは私にも分からない。いずれ分かるのかもしれないが、今はどうする事も出来ない」



そう言って父も悲しそうな表情を浮かべ、ため息を零す。


結婚式を半年後に控え、心躍らせていたのは父も同じ。

それが突然の婚約破棄によって、喪失の海に投げ出されたのだから仕方のないことだろう。



「私にはもう諦めるしか、道は残っていないということですか……?」


「……そういうことになるな」



「……っ!」