私は見えないながらも目を凝らして、辺りを見回す。
小さい屋敷ながらも、やはり侯爵家の別荘。
それなりに高価な装飾品が置かれているし、天井にはシャンデリアが釣り下がっていて、床は絨毯が敷かれ、ふわふわとしている。
待つこと数分、遠くからぼんやりと明かりが近づいてきた。
「ひとりで怖くはなかったか?」
「大丈夫よこれしき。……もう、子供扱いして」
私が少しむくれると、ランスは少し笑う。
「私の部屋がある二階へ行こう。アリシアは部屋に入ったら少しの間休んでいてくれ。私は屋敷のランプに火を灯した後、メデュールの様子を見てくる。まあアイツのことだから、自分で馬小屋へ避難しているとは思うが」
ランスの後ろをついて、二階へと上がった。
階段を上りきってすぐの扉、そこがランスの部屋だという。
部屋はカーテンが閉め切られ真っ暗だったが、部屋の入り口にあるランプに火を灯し、カーテンを開けるとそれなりに明るくなった。
少し大きめの寝台に、机とソファー。
壁には本棚がふたつあり、分厚い本が綺麗に並べられている。
別荘とはいえ、身内以外で男の人部屋に入ることは初めてだった。
心なしか緊張してしまう。

