捕まえてごらんなさいっ!~意地っ張り令嬢と俺様侯爵の溺愛攻防戦~

文字を追うにつれて、徐々にその文字が霞んでいった。

ぼたぼたと紙に零れた滴が染み込み、よりその文字を滲ませていく。


そこには私に対しての思いやる気持ちなど、全くといっていいほど皆無だった。


だた、私との婚約を破棄して欲しい。

これはレイス家の問題ゆえに、それ相応の慰謝料を払う。

その理由については、私には明かすことはできないということが、簡潔に書かれていた。


「こんな内容、信じられません……!だって二日前まではディアスと!お父様、馬車の用意をして下さいませんか!レイス家へ……、ディアスに会って話をしたいのです!どうか……!」

「それはできない。書類の中には、もう我がネリベル家と関わらないという誓約書もあるんだ。レイス家がその誓約書を渡して来た以上、こちらもそう簡単に接触する事は不可能だ」


「どうしてです!?それはレイス家の問題であって、こちらから接触するのは問題ないのではないですか!?」


「それが駄目なのだよ、アリシア。この書類は全て国王からの命で作られたものなのだ。接触すれば最後、レイス家も我がネリベル家も爵位剥奪の罰が科せられる。これはお前だけの問題ではない。家全体の問題に関わってくるんだ」


「そんな……!」