あっという間に敵たちはランスの攻撃に耐えられず、その場で倒れ込むようにへたり込んでしまった。

敵たちは、身体のあちこちに傷を作り、そこからは血が滲み出ている。


「何人かかってこようとも、私には勝てない。刃を向ける相手を間違えたな」

「ひ、ひいいいっ!」

「このまま私に殺されたくなければさっさとここから立ち去れ。そして奴に伝えろ、無駄な足掻きはよせと」


奴……?

ランスの言葉に引っかかる。

どうやら黒幕がいるらしい。けれど、それは一体誰?


敵たちは這うようにして、その場から逃げるように立ち去った。

そうしてようやく、辺りに静けさが戻る。

ランスはふう、と息を吐くと、持っていた長剣を鞘に戻した。

そして伏せていた私の元へと駆け寄る。


「……大丈夫か?」

そう言って私の前に手を差し出す。

私はその手を取ると、ゆっくりと立ち上がった。

「あ、ありがとう」

「怖かっただろう、こんなことならばもう少し人を連れて来るべきだったな。こんな場面に遭遇させてしまってすまない」

「いいえ、大丈夫よ。ランスが守ってくれたもの。それよりも……」

と言いかけたところで話すのを止め、安心させるように、ニコリと笑みを見せた。

襲った人間が一体何者なのか聞こうと思ったが、きっとランスは私を心配させまいと答えてくれることはないだろう。

出かかった言葉を飲み込む。


その間も、私の心臓は驚くくらいに早鐘を打っている。

今までの非日常的な場面に、変に興奮しているからなのか。

それとも……。


ただ、この一件で私のランスを見る目が変わったのは間違いない。


彼は確かに"騎士団長"なのだ。

この国を守る、英雄。

そんな彼が、私を守ってくれた。


私はランスを見つめる。

ランスもまた、私をじっと見つめていた。