ランスは目を閉じて、ただ静かに聴いている。

歌っているとき、母の顔と声が思い出されて、より私の心を切なくさせた。


必死に病魔と闘っていた母。

死期を悟ったときでも、最期まで母は生きようと足掻いた。

それは愛する父のため、兄のため、私のため。

寂しい思いはさせたくないって、どんなに苦しくても笑顔を振りまいた。


息を引き取ったとき、母の安らかな顔を見て、もう会えない悲しさとなんとかしてやりたかった後悔と、これでようやく母も楽になれたという安堵と、複雑な思いが交錯していた。


この歌を思い出すとそのときの記憶が蘇ってくるから、いつしかこの歌も口ずさむことが無くなって……。


でも今、久々に歌ってみて思う。

この歌は、私と母を繋ぐ大切な祈りのもの。

歌うことによって、私も母を思い出し、祈り、そして少しずつ前に進んでいけるものなのだと。



「……ありがとう、アリシア」

「上手く歌えなくてごめんなさい」

「いや、十分心に響いた。あのときを思い出して、胸が締めつけられるような……」


"あのとき"

その言葉に、反応する。



そう言えばどうしてランスはこの歌を知っているのだろう?


今なら教えてくれるかもしれない。


そう思い、口を開こうとした瞬間、ランスの表情が一変した。