「私と同じなのね。……私の母も長らく病気で伏せていて、とても辛い思いをしたでしょう。分かるわ、その気持ちが」

「どれだけ私が努力しようとも、母の病魔には勝てなかった、助けてやれなかった。それが今でも心残りではある。ただ、ここで過ごしていた時間、父と母はとても幸せそうだったよ。この小さな屋敷で一日一日を笑顔で過ごしていたふたりを見て、助けてやれなかったことは悔しいが、ふたりに後悔はなかったんじゃないかって思っている」

「幸せだったと思うわ。愛する人と最期まで一緒にいられたんですもの」


「ありがとう、アリシアにもそう言って貰えると心が軽くなる。自分の無力さにいつも心痛めていたからな。……母が亡くなってからは、父はここに来るとそのときを思い出して苦しくなるから、と滅多に来ることも無くなってね。たまに私が静養で何人かの侍従と共に来るだけ。ここに来ればいつもこうやって、湖を眺めて母を思い出して祈るんだ」


痛いくらいに分かるランスの思いに、涙が溢れてくる。


大切な人を守れなかった苦しさ、辛さ。

いなくなってしまった、悲しさ、寂しさ。


その思いは消えることはないから。


でも、こうやって思い出残る場所で、大切な人を思い祈る。

そうやって、少しずつ前に進んでいくことができるのね。