「身体が固くなっているぞ、目を閉じているな?」
「だ、だって」
「開けてみろ、アリシアが見た事のない景色が広がっているはずだ。感動するぞ?」
当たる風が思う以上に強く、顔を少し横に逸らしながらも、恐る恐る目を開けた。
「わ……!」
瞳に飛び込んで来たその景色に、思わず声を上げる。
目の前に広がっていたのは、一面の草原。
遠くには高くそびえ立つ山があり、雲一つない空に煌々と輝く太陽が、その山の頂を照らしていた。
「綺麗ね!」
「だろう?馬車に乗っていたら決して見ることのできない光景だ。身体全体で感じる風も、徐々に心地よくなっていくはずだ」
「そうなの?まだ、ちょっと慣れていないけれど。いずれそう感じられるのね」
メデュールは私たちを乗せ、ひたすら走る。
この広い草原を馬で駆けることが、これほどまでに気持ちいいものだとは思わなかった。
ランスの言葉通り、あれだけ強いと思っていた風も、心地よいと思えるようになった。
いつしか恐怖は消え、楽しいと思えてくるから不思議だ。
やがて遠くに森が見えてくる。
ランスはそこを指さしながら言った。
「アリシア、あそこにある森が見えるか?あの中に入るぞ」
「あそこに?一体なにがあるの?」
「まあ、行ってからのお楽しみだ」

