それでも…。
「佳人くん、ありがとう。覚えててくれたんだね。大好き」
と、はにかんで笑ってくれる彼女に、俺はまた…堕ちるから。
「じゃあ、お手をどうぞ?お姫様?」
そう言って、運転席から助手席に回り込んで、仰々しく手を差し出した。
海辺は、丸っきり人の影がない。
でも太陽が暖かく、海風もそんなになかったから、俺は彼女をベンチに誘って、寄り添いながらその細波の音に耳を傾けた。
彼女は、小さな貝殻を見付けたようで、「見て見て、可愛い!」なんてはしゃいでる。
こういうのって、いいな。
ずっと続けばいいのに。
そう思いながら、遠い目をしていたら、急にその視界が暗くなった。
「…?あやめさん?」
「この彼氏さんは、どうしてこう、彼女を置いてどっかにいっちゃうかなぁ?」
「あ、すみません…」
「すみません、はもう聞き飽きたよ?」
「じゃあ……キス、してもいいですか?」
「…えっ?や、ちょ、ここじゃ、だ、め…っ」
「まぁ、Noって言われてもしちゃいますけどね」
「んんん…っばか!」
ちゅっと軽いリップ音が、よほど恥ずかしかったのか、彼女は俺の胸にぼすっと入り込んで赤く染まった顔を隠した。



