だから、今回のドライブは、一つのチャンスでもあった。
まだ、彼女の心の中に燻っている思いがあるんじゃないかと、そう思っていたから。
いっそ。
サラサラと流れていく砂のように。
この生まれたばかりの想いを溢れさせて、彼女の全てに降り積もればいいのに…。
すき。
そう思うだけで、胸の中が満ちてゆく。
「さ。あやめさん、そろそろ目的地に着きますよ?」
「え…?あ、…うわぁ…」
車から見える景色は、冬色に染まった海岸。
付き合い始めた時、何かのきっかけで聞いた、好きな場所。
彼女は楽しそうに、「春夏秋冬、海が好き」だと笑って教えてくれたから。
今年はまだ幸いにも雪は降り出していなかったし、寒さ対策もばっちりだから、プランを立てたんだ。
少しでも、彼女が喜んでくれることを願って。
彼女の心が和んで、その心の奥を見せてくれると、信じて…。
これは、今までずっと知らなかった気持ち。
俺の中に隠れていた感情。
愛しさで参っているのかもしれない。
ただ、彼女という熱に浮かされているのかもしれない。



