がらがらがら。
誰もいない教室は、ドアを開けるとひんやりとした空気が身にまとわりついてくる。
俺は、どうにも衝動を堪え切れずに握っていた手を掬い取って、体を引き寄せてから少し強引に口唇を奪った。
「な、に…っ」
「あやめさん…すきだ…」
「ばか、ここ…教室…」
そう言いながらも、彼女は俺のシャツを掴んだまま離さない。
「キス、しても、いい?」
「もう、して…っるっ」
「だめ?」
「……私に、選択権なんか、無いくせに…っ」
ちゅっと小さな音を立てて、名残惜しげにキスを落とすと、彼女の瞳に浮かぶ涙。
「ごめんね?あやめさん…」
「許さない…だから……」
___ぎゅうってして?
今度は俺が抱き締められる形になって、壁にとん、と縫い止められた。
愛しくして愛しくて、誰にも取られたくない。
それが、例え甲斐さんだとしても…。
いや、甲斐さんだから…か。



