歩美は編集長の了解を取りに行くと、驚いたことに、二つ返事で許可が下りた。

 電話の相手の名を言ったところ、彼は顎に手を沿えてウンウンと頷く。彼もまた、大いに興味を持ったようだった。

 彼の話によると、何よりも電話の相手が、有力な政治団体に繋がっている人物なのだそうだ。

 その政治団体が母体となる政党が、前回の衆議院、参議院議員選挙で、飛ぶ鳥を落とす勢いで与党の議席を奪っているとのことだった。政界再編、という言葉もちらつく。

 しかし、いかんせんキーマンとなっている人物の顔が見えないのだ。実態が掴めない。

 ところが今回は向こう側から連絡を取ってきたことに、意味があると言った。

 そして歩美が話した女性こそ、その政界を操るフィクサーの代理人だと、彼は教えてくれた。


 彼はそういった背景について、歩美は何も考えなくてよいと言った。自分のコラムの取材だけに専念し、ありのままを報告することを念押しされた。

 直ぐに気付いた事だが、敢えて歩美に詳しく教えたのは、取材先行の記者の行動心理を牽制していると分かった。


 歩美は、改めて彼が有能な官僚だと知った。